サークルのArcブロックチェーン、設計段階から量子耐性を実装——「2030年リスク」に先手、メインネット立ち上げに向けロードマップ公開
ステーブルコインUSDC発行企業のサークルが、独自開発のEVM互換L1ブロックチェーン「Arc(アーク)」で耐量子コンピュータ暗号(PQC)のロードマップを公開。今年後半予定のメインネット始動と同時にオプトイン形式の耐量子署名スキームを導入し、500ミリ秒未満のファイナリティを維持しながら段階的に全階層のセキュリティを量子耐性へ移行する計画を明らかにした。
サークル、独自チェーン「Arc」の量子対策ロードマップを公開
ステーブルコインUSDCの発行企業である米サークル(Circle)は先週、独自開発のEVM互換L1ブロックチェーン「**Arc(アーク)**」における耐量子コンピュータ暗号(PQC:Post-Quantum Cryptography)のロードマップを公式ブログで発表した。今年後半に予定されるアークのメインネット立ち上げ時から、段階的に先進的なセキュリティ機能を実装する計画だ。
なぜ今、量子対策が必要なのか
現在の仮想通貨市場を支える**公開鍵暗号方式(楕円曲線暗号など)**は、早ければ2030年までに量子コンピュータによって解読される可能性があると、グーグル(Google)の研究チームなどが指摘している。特に懸念されるのは「**Harvest Now, Decrypt Later(今収集して後で解読する)**」攻撃で、攻撃者が将来の暗号解読を見越して現在のデータを収集するリスクがすでに顕在化しつつある。
サークルは公式声明の中でこのリスクを強く警告し、アークを設計する上で量子コンピュータの脅威を織り込んだ基盤構築を選択したと説明している。
段階的な移行ロードマップ
アークの量子対策は以下のフェーズで段階的に実施される。
フェーズ1:メインネット始動時(2026年後半予定)
フェーズ2:中期(メインネット後)
フェーズ3:長期
既存チェーンとの比較:移行コストの非対称性
サークルが指摘する重要な課題の一つは、**既存ネットワークの移行コスト**だ。ビットコインなどのすでに稼働中のチェーンで全UTXO(未使用トランザクション出力)を新たなウォレットへ移行するには、最善のシナリオでも**数カ月間の継続的な処理**が必要になるとサークルは試算している。
これに対し、設計の初期段階から量子コンピュータの脅威を見据えて基盤を構築するアークのアプローチは、機関投資家向けインフラにおける新たな標準を提示するものだ。銀行やステーブルコイン発行企業を筆頭とする大手金融機関にとって、長期的な資産セキュリティの確保はインフラ選定における必須条件となっている。
Arcの現状と技術仕様
アークは2025年10月にパブリックテストネットをローンチ済みで、開発者向けのスマートコントラクト移行環境の整備も進められている。主な技術的特徴は以下のとおりだ。
業界への影響:量子耐性が競争優位に
グーグル・クアンタムAIなどの研究チームが2026年4月初旬に発表した論文では、ビットコイン・イーサリアムなど主要チェーンの量子コンピュータリスクが詳細に分析され、特に2030年のRWA市場(16兆ドル規模)への影響が指摘されている。
この文脈において、サークルのアークが設計段階から量子耐性を組み込んでいる点は、金融機関・機関投資家向けのブロックチェーンインフラとして差別化要因となりうる。USDCをはじめとするステーブルコインの長期的な信頼性を支える基盤インフラとして、アークの動向は2026年後半の注目テーマの一つとなりそうだ。