米クラリティー法案、ステーブルコイン利回り問題で「48時間以内に進展」——コインベースCLOが楽観的見通し、成立への残り5段階の関門
米デジタル資産市場構造法「クラリティー法」をめぐり、コインベース最高法務責任者が48時間以内の進展を示唆。ステーブルコイン利回りを巡る仮想通貨業界と銀行業界の対立が最終局面を迎えた。成立すれば日本円ステーブルコイン市場にも影響する可能性がある。
クラリティー法案、難航から「合意近し」へ
米大手仮想通貨取引所コインベースの最高法務責任者(CLO)ポール・グリーウォル氏は2026年4月1日、米経済メディア「フォックス・ビジネス」のインタビューで、デジタル資産市場構造法案「**クラリティー法(CLARITY Act)**」におけるステーブルコイン利回り問題について「合意に極めて近い状態にある」と述べ、48時間以内——すなわち4月3日(金)中に交渉が進展するとの見通しを示した。
クラリティー法は、デジタル資産に対する米証券取引委員会(SEC)と商品先物取引委員会(CFTC)の管轄を明確に線引きすることを目的とした包括的な法案だ。2025年7月、下院を超党派の294対134で可決したが、上院での審議が難航し現在に至っている。
対立の核心:ステーブルコイン利回りをめぐる攻防
今回の争点は「**ステーブルコイン保有に対する利回り(イールド)付与の可否**」だ。
銀行業界の懸念は明快だ。仮想通貨取引所がUSDCなどのステーブルコインに年4〜5%の利回りを付与すれば、銀行預金より高い収益が得られるため、ユーザーが銀行から資金を引き出して仮想通貨プラットフォームに移す「**預金流出リスク**」が現実化するというものだ。
対するコインベースなど仮想通貨業界は、利回りを禁止すれば米国のイノベーションが損なわれ、消費者にも不利益をもたらすと反論してきた。
現時点での交渉の骨子は以下の通りだ。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| **禁止される利回り** | 単なるステーブルコイン保有に対するイールド支払い |
| **許容される報酬** | 支払い・送金などの取引活動に連動したリワードプログラム |
| **ジーニアス法との整合性** | 既成立のジーニアス法(ステーブルコイン規制)ではイールド支払いを明確禁止 |
上院を阻む3つの残存対立点
たとえ利回り問題で合意が成立しても、法案は複数の障壁を越えなければならない。
**① DeFi条項をめぐる対立**
民主党は分散型金融(DeFi)条項について、マネーロンダリングや制裁回避などの不正資金流入リスクへの規制が不十分だと懸念する。
**② 倫理規定をめぐる対立**
トランプ大統領一族が独自のミームコインやDeFiプロジェクトで利益を得ていることを受け、民主党は政府高官が仮想通貨事業で個人的利益を得ることを禁じる倫理規定の盛り込みを強く要求している。
**③ 大統領の政治的条件**
トランプ大統領が有権者ID法案(全国一律での写真付き身分証明書義務化)を先に可決しなければ仮想通貨関連法案に署名しないという政治的条件を示唆しているとの報道もあり、先行きに不透明感が残る。
成立への5段階の関門
仮に上院銀行委員会のマークアップ(条文審議)が4月後半に実施されたとしても、法案はさらに以下の手続きを経る必要がある。
1. 上院本会議での60票以上の可決
2. 農業委員会通過版との統合
3. 下院通過版との調整
4. 下院再可決
5. 大統領署名
上院本会議採決は**2026年8月以前**でなければならない。それ以降は中間選挙キャンペーンが本格化し、論争的な法案の採決は政治的に困難になる。予測市場ポリマーケットでは2026年内の成立確率が現在60%台で推移している。
日本の円建てステーブルコイン市場への波及
クラリティー法の成立動向は、日本市場にも無関係ではない。米国での明確な規制枠組みが確立されれば、グローバルな機関投資家のステーブルコイン活用が加速し、**JPYC**など日本国内ステーブルコイン事業者の国際連携・活用場面も拡大する可能性がある。
一方、米国が「ステーブルコイン利回り禁止」の方向で規制を固めた場合、日本でも同様の規制議論が起こりやすくなる。2025年に施行された改正資金決済法下で電子決済手段として整理されているJPYCを含む国内ステーブルコインの利回り付与の可否は、今後の重要な論点となりそうだ。
グリーウォル氏は「報酬の重要性についての認識が広まりつつある」と述べており、交渉が最終局面にあることを示唆した。今週中に何らかの進展があるかどうか、世界中の仮想通貨業界が注視している。