三菱商事、JPモルガンのブロックチェーン決済「Kinexys」を採用——日系企業として初、国際送金の即時化へ

三菱商事が2026年度にもJPモルガンのブロックチェーン基盤決済サービス「Kinexys BDA」を活用し、海外拠点間のドル建て即時送金を開始する方針。日系企業として初の採用事例となり、日本でもブロックチェーン国際決済の実用化が本格化している。


三菱商事、日系企業初のKinexys採用へ

日本経済新聞が2026年3月31日に報じたところによると、三菱商事は2026年度にもJPモルガン・チェースのブロックチェーン基盤決済サービスを活用し、海外拠点間でのドル建て国際送金を開始する方針を固めた。ロンドン、ニューヨークなどの海外拠点間で資金をほぼ即時に融通できる体制を整える。

JPモルガンのデジタル預金口座「ブロックチェーン・デポジット・アカウント(BDA)」を採用するのは**日系企業として初めて**のことで、日本の大手事業会社がブロックチェーン基盤の国際決済を実用化する段階に入ったことを示す重要な事例として注目される。

JPモルガン「Kinexys」とは

BDAは、JPモルガンのブロックチェーン部門**「Kinexys(キネクシス)」**が提供するサービスの一つ。ステーブルコインやトークン化預金といった新たなデジタル通貨を発行するのではなく、口座残高をブロックチェーン上の預金台帳に記録することで送金を完了させる仕組みだ。

すでにシーメンス、BMW、フェデックスなど世界の大手企業が導入しており、三菱商事は円建てステーブルコインを使った別の国際送金実証実験とは別に、本サービスを活用してドル建て送金を実現する計画だ。

なぜ今、ブロックチェーン国際決済なのか

従来の国際送金はSWIFT(国際銀行間通信協会)とコルレス銀行(仲介銀行)を組み合わせた仕組みに依存してきた。この仕組みには複数の構造的な課題がある。

| 課題 | 内容 |

|---|---|

| **高コスト** | 複数の仲介銀行が手数料を徴収 |

| **処理遅延** | 複数の銀行システムをまたぐため数日かかることも |

| **透明性の欠如** | 最終段階までコストが確定しない |

| **時間制約** | 週末・祝日をまたぐ送金に遅延が生じやすい |

グローバルに事業を展開する大手商社にとって、こうした制約は資金効率の低下に直結する。ブロックチェーン基盤のBDAはこれらの課題を解消し、24時間365日対応のリアルタイム送金を可能にする。

世界・日本の金融機関が競うブロックチェーン決済基盤

三菱商事の採用は、世界の主要金融機関がブロックチェーン活用の国際決済インフラ整備を競う流れの中で生まれた。

  • シティグループ:独自の「Citi Token Services(CTS)」でニューヨーク・ロンドン・香港間のリアルタイムトークン化送金をすでに稼働
  • バンク・オブ・アメリカ:ゴールドマン・サックス、ドイツ銀行、三菱UFJ銀行など計10行とG7通貨連動ステーブルコインの共同発行を検討中(2025年10月発表)
  • 日本国内でも官民両面で加速

    日本でも官民両面での対応が本格化している。

    **日本銀行**の植田和男総裁は2026年3月、ブロックチェーン技術を用いた「中央銀行マネー」を海外送金や日銀当座預金の決済に活用することを検討すると表明。BIS(国際決済銀行)主導の「プロジェクト・アゴラ」にも参加しており、第1フェーズの完了は2026年前半が見込まれている。

    **民間では**、2025年11月に三菱UFJ銀行・三井住友銀行・みずほ銀行が三菱UFJ信託銀行を受託者として、ステーブルコイン発行とクロスボーダー利用を検証する実証実験を金融庁の「FinTech実証実験ハブ」支援案件として開始した。

    三菱商事の今回の動きは、日本の大手事業会社がブロックチェーン基盤の国際決済インフラを本格的な実用フェーズに移行させた先駆的事例として、今後の日本企業の採用動向を占う試金石となりそうだ。