ステーブルコイン

全銀ネット、50年超ぶりの決済システム全面刷新へ——ステーブルコイン・トークン化預金との連携も視野

全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)が2030年稼働を目指す新決済システムの構想を公表。ステーブルコイン・トークン化預金との接続基盤を整備し、デジタルマネーとの共存時代を見据える。SBI金融経済研究所も「3つの摩擦」を分析したレポートを公開した。


全銀システム、創設以来初の全面刷新へ

全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)は2026年3月19日、専門会議の報告書を公表し、1973年の稼働開始以来50年以上にわたって日本の銀行間送金を支えてきた全国銀行データ通信システム(全銀システム)を全面刷新する構想を明らかにした。年間取扱件数約20億件・取扱金額約3,671兆円(2023年実績)という日本金融インフラの根幹を担うシステムの刷新は、デジタルマネー時代に向けた重要な布石となる。

全銀ネットは**2030年稼働**を目標に、2026年度中に構築の是非を最終判断する方針だ。

なぜ今、刷新が必要なのか

現行システムが抱える課題は複数ある。

  • 障害リスク:2023年10月の中継コンピュータ障害では送金・着金合計566万件に遅延が発生
  • 構造的老化:度重なる機能追加で設計が複雑化し、専門人材の確保が困難に
  • 新技術への非対応:トークン化預金やステーブルコインとの接続に対応できない構造
  • 特に最後の点は、Web3・デジタルマネー時代における競争力に直結する。全銀ネット会長(三菱UFJ銀行頭取)の半沢淳一氏は「支払い環境の急速な変化に対応し、多くの金融機関が利用しやすい仕組みを構築することが重要」と語った。

    新システムの主な機能

    新システムが稼働当初に提供を目指す機能は以下の通り:

    リアルタイム化

  • 即時着金・着金確認の実現
  • ISO 20022に準じた24時間365日即時決済
  • 将来的には海外リアルタイム決済システムとの相互接続も視野
  • 安全・信頼性強化

  • 送金先口座の事前確認・詐欺対策
  • マネロン対策情報(AML情報)の添付機能
  • ステーブルコイン・トークン化預金との連携

    新システム本体にはステーブルコインやトークン化預金の発行・交換機能は組み込まないが、外部システム(ステーブルコイン発行事業者等)との連携インターフェースを整備し「規制要件や市場動向に応じた柔軟な接続」を可能にする設計とする。

    SBI金融経済研究所が分析する「3つの摩擦」

    同じく3月25日、SBI金融経済研究所はステーブルコイン・トークン化預金・ホールセールCBDCを比較分析したレポートを公表した。著者は研究主幹の副島豊氏。

    レポートでは、ステーブルコインが構造的に抱える課題を「3つの摩擦」として整理している:

    | 摩擦の種類 | 内容 |

    |---|---|

    | **受容性の摩擦** | 受け手が同一チェーンにアカウントを持たなければ転々流通が成立しない |

    | **償還の摩擦** | 発行体が異なれば他社発行分での代替償還ができない |

    | **台帳非互換の摩擦** | 同一発行体でも異なるチェーン間ではトークン移動が困難(CCTPで一部対応可能だが非効率) |

    副島氏はこれらの摩擦が「新しい問題ではない」と強調。明治初期の「内為コルレスバンキング」でも類似の非互換性問題が存在し、中央銀行設立と二階層型マネーシステムの確立によって解決された歴史的経緯を参照として提示した。

    「デュアルシステム」という未来像

    レポートが提示する概念は「**デュアルシステム化**」——伝統的金融システムとブロックチェーンベースの新世界が並存する状態だ。その結節点として**トークン化預金**と**ホールセールCBDC(トークン化日銀当座預金)**が重要な役割を担うとされている。

    実際、日本銀行も2026年初にブロックチェーンを活用した当座預金決済の実験着手を表明しており、伝統金融とDeFiの架け橋となる「中央銀行のトークン化」が現実味を帯びてきた。

    まとめ:日本のデジタル決済インフラ整備が加速

  • 全銀ネットの新決済システム構想(2030年稼働目標)が公表
  • ステーブルコイン・トークン化預金との外部連携を設計に組み込み
  • SBI研究所が「3つの摩擦」を分析し、デュアルシステム化の時代像を提示
  • 日銀のトークン化実験とJPYCの急拡大が重なる中、国内の決済インフラ整備が本格化している